小説 渋沢栄一

2024年03月21日 13:35

「小説 渋沢栄一」(上・下幻冬舎版)津本陽著を読みました。合わせて「論語と算盤」渋沢栄一著角川ソフィア文庫版を再読してみました(確か「超訳・論語と算盤」渋沢栄一著阿部正一郎訳を以前読んだことがあります)。

著者の津本陽さんは歴史小説を得意としている小説家で、緻密な資料と解説を交えながら物語を展開するスタイルで知られています。剣豪や戦国大名、幕末英傑を主題としたものが多く、「海重の海」で第79回直木賞を受賞。日本経済新聞に連載した「下天は夢か」は単行本出版後にベストセラーとなっています。(Wikipediaより)

「小説 渋沢栄一」は、江戸時代末期に武蔵国(現:埼玉県深谷市)の豪農の長男に生まれ、幕末動乱期に尊皇攘夷に目覚め倒幕運動に関わるも一橋慶喜に見出され幕臣となり、維新後は大蔵官僚として造幣、戸籍、出納など様々な政策立案を行い、退官後は第一国立銀行や東京商法会議所、東京証券取引所といった多種多様な会社や経済団体の設立・経営に携わり、そのうち企業は500社にも及ぶという。新たな国家システムを構築し「近代日本資本主義の父」と称された渋沢栄一の激動の生涯を描く歴史巨編です。(裏表紙解説文より)

「論語と算盤」は、今話題の大谷翔平選手が読んでいたことでも話題になりましたが、今年の7月から新紙幣の1万円に登場する、渋沢栄一さんが1916年に著した本です。倫理(論語)と利益(算盤)の両立をあげ、経済を発展させ、利益を独占するのではなく、国全体を豊かするために、富は全体で共有するものとして社会に還元することを説いています。

「小説 渋沢栄一」「論語と算盤」両方読んでみて、より深く渋沢栄一という不世出の経済人を理解することができました。できるならば続けて読んでみることをお勧めします。幕府派と薩長派、攘夷派と反攘夷派、実業と士道、仁義と冨貴、順境と逆境、失敗と成功、官と民、富と貧、公と個もちろん論語と算盤など、渋沢栄一さんの人生は一見対立しているものとの戦いだったのではないかと思います。対立を避けこれらを包括的に筋道を通してまとめ上げたことで、混乱と閉塞を打ち破った。企業は誰のためにあるのか?を問われる今こそ、渋沢栄一さんの考え方は参考になるのではないでしょうか。

ちなみに以前読んだ時は気づかなかったのですが、「論語と算盤」に“常識とは如何なるものか“という項目があります、『ここに「智、情、意」の三者が各々権衡を保ち、平等に発達したものが完全の常識だろうと考える』(本文抜粋)。要は知恵と情愛と意志のバランスが大切であると説いているのですが、これってオズの魔法使いに出てくるカカシの知恵、ブリキの心、ライオンの勇気に似ているのでは?1900年にアメリカで出版されたライマン・フランク・ボームの童話ですが、なかなか興味深く感じました。


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