「母の待つ里」浅田次郎著を読みました。著者の浅田次郎さんは、中央大学杉並高等学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。除隊後はアパレル業界など様々な職につきながら投稿生活を続け、1991年、「とられてたまるか!」でデビュー。悪漢小説作品を経て、「地下鉄に乗って」で吉川英治文学新人賞、「鉄道員」で直木賞を受賞。時代小説の他に「蒼穹の昴」、「中原の虹」などの清朝末期の歴史小説も含め、映画化、テレビドラマ化された作品も多い。(Wikipedia調べ)浅田次郎さんの作品を読むのは「地下鉄に乗って」以来2冊目です。ちなみに「地下鉄に乗って」は映画化されており、今回の「母の待つ里」はテレビドラマ化されています。
内容は裏表紙にある作品紹介によると、・・・40年ぶりに帰る故郷で待っていたのは、初めて会う〈母〉だったー。大企業の社長として孤独を抱える松永徹。定年と同時に妻から離婚された室田精一。親を看取ったばかりのベテラン女医・古賀夏生。人生に疲れた三人が選んだのは「里帰り」だった。囲炉裏端に並ぶ手料理や不思議な昔話。温かく迎えてくれる見知らぬ母と過ごす時間が三人を少しづつ変えていく・・・・こんな感じです。
この本を読んで、人類は、あまりにも人口が集中した、コンクリートで固められて自然とはかけ離れてしまった都会に、適応できているようで、生物としてまだ適応できていないのかもしれないと感じました。効率、生産性、利益率などをあまりにも追い求めた結果、命あるものとして何か大切なものをギュウッと固めて心の隅っこに隠しながら生きなければならない世の中になってしまったのではないか?こうした余裕のなさは、家族の中にも同じように入り込んでいて、単身世帯が増えている一因になっているのではないか?。ひょっとすると里山での生活や他人ではあっても温かく迎えてくれる母は、心の隅っこに固めてしまった大切なものを溶かしてくれるような存在なのかもしれません。
昔、テレビで放送していた“まんが日本昔ばなし“のお話の中に入り込んだような、変な言い方ですが現代の昔話のような小説です。ぜひ読んでみてください。