「人生は移動距離で決まるのか?」伊藤将人著を読みました。著者の伊藤将人博士は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員・講師。2019年長野大学環境ツーリズム学部卒業、2024年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。戦後日本における地方移住政策史の研究で博士号を取得(社会学、一橋大学)。立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員、武蔵野大学アントンプレナーシップ研究所客員研究員、NTT東日本地域循環型ミライ研究所客員研究員。地方移住や関係人口、観光など地域を越える人の移動に関する研究や、持続可能なまちづくりのための研究・実践に長年携わる。著書に「数字とファクトから読み解く 地方移住プロモーション」がある。(表紙裏著者紹介より)
この本の内容はこんな感じです
移動手段が飛躍的に発展し、便利になったと言われる世の中だが、以前よりの移動しにくい人や、移動できない人も多くいる。世界中を旅行したり、移住を繰り返したりする人がいる一方で、日々の買い物に行くことさえも一苦労という人がいる。「移動に困難を感じている人」や「移動したいけれど、移動できない人」とは一体どんな人だろう。逆に、自由に移動し続けている人々は、一体どんな人だろうか。こうとも言えるだろう。実は、現代社会には、「移動できる人」と「移動できない人」の間に大きな“格差“が存在するのだと。そして、私たちは、無意識のうちに移動できる人ほど、“格“が高い“勝ち組“で、移動できない人、移動しない人は“格“が低い“負け組“だと思っていないだろうか。ー中略ーでは一体、私たちはこうした移動をめぐり人々の間で生じる格差や問題と、どのように向き合えば良いのだろうか。どうすれば、よりよい移動の構想は実現するのだろうか。ー中略ーそこで本書は、「移動格差」という言葉をキーワードに、移動を問い直し、現代の移動の実態と、移動がつくる社会の姿を明らかにする。簡潔に言えば、「移動って何?」「なぜ、どんなふうに移動は不平等なのか?」を、社会学的な視点から解き明かす本である。(はじめにより抜粋)
低収入の家庭に生まれても高収入の家庭に生まれても、チャンスは平等にあり能力さえあれば成功を掴むことができる。個人の能力に基づいて社会的地位や権力は分配されるべきという能力主義は、なんとなく納得させられてしまいますが、収入によって移動格差があるとしたら?自由にどこでも制限なく移動できる人と色々な事情で移動が制限されてしまう人・・・・そもそもスタートラインから不平等ではないでしょうか?移動という観点から見ても競争は公平に行われているようには思えません。
しかし競争に勝ち抜いて成功したからといって、お金持ちになったからといって幸せになれるとは限らない・・・
このブログに登場した「私たちは何を捨てているか」という本の中で著者が最後にテレビドラマ「北の国から2002遺言」で田中邦衛さんが演じる黒板五郎のセリフを引用しています。
「金なんか望むな。倖せだけを見ろ。ここには何もないが自然だけはある。自然はお前らを死なない程度には充分毎年喰わしてくれる。自然から頂戴しろ。そして謙虚に、つつましく生きろ。それが父さんの、お前らへの遺言だ」
・・・・・・・じっくり考えたいと思います。