ホセ・ムヒカ 自由への挑戦

2025年07月09日 17:19

「ホセ・ムヒカ 自由への挑戦」マウリシオ・ラブフェッティ著を読みました。著者のマウリシオ・ラブフェッティ氏はウルグアイ人の両親を持つ、ウルグアイ系アメリカ人ジャーナリスト・政治コラムニスト。ワシントンD.C.のラテンアメリカ特派員、ブラジルのAFP通信の編集幹事、ウルグアイの主任特派員を歴任し、現在はラテンアメリカのAFPの経済担当編集者、ウルグアイのテレビ局「カナル5」の政治アナリストを務める。

この本は、貧困、孤独、信念、そして再生を軸に描かれる、現代における“自由“の意味を問い直す一冊です。若き日のムヒカ氏は、社会の不平等を糾弾し、武装ゲリラ「トゥパマロス」に身を投じました。逮捕・投獄され、拷問と孤独に晒されながらも、彼の中で「自由」とは単なる外的なものではなく、精神の在り方であるという哲学が育まれていきます。釈放後、彼は武装ではなく民主主義という道を選び、政界に復帰。やがて大統領へと上り詰めたムヒカ氏は、公邸に住むことなく、郊外の農場に住み続け、自ら畑を耕しながら国政を担いました。その質素な暮らしぶりは「世界で最も貧しい大統領」として世界に報じられましたが、本人は、「質素さこそ、欲望に支配されずに生きる自由だ」と語ります。単なる伝記ではなく、「自由とは何か」「豊かさとは何か」を読者に問いかける哲学的な一冊になっています。

ムヒカ元大統領は多くの名言を残しており、この本の中でも紹介されています。「これ以上無理というときには、死んでしまうか木の下で寝るだろう」という言葉があります。釈迦が悟りを開いたのは、菩提樹の下で、それは単なる場所ではなく、「自然の中で、すべてを手放し、ただ在る」という精神の象徴だそうです。「欲望を離れることで苦しみから解放される」と説いた釈迦と何か共通点があるように思えて印象に残りました。

巻末で監修者である鰭沼悟さんが書いています
「この本には自分なりの価値基準を見つけるヒント、すなわち生き方の本質に気づける手がかりが数多く散りばめられています。読者の皆様には、ムヒカ氏の言葉を携えながら、ご自身の自由について考えていただきたいと思います」

・・・・・・・・・・・・・・・“自由とは“・・・・・・・・・・・じっくりと考えたいと思います。

おまけ
詩:「空っぽの器が一番よく響く」
欲を脱いだその朝に、
私は初めて 風の音を聞いた。
食器棚の奥にしまっていた器のように、
静けさが 日々の底に残っていた。

持たぬということが、
こんなにも身軽だったとは。
かつては重ねていたーー
服も、肩書きも、願いまでも。

けれど、
ひとつひとつを手放していくうちに、
空いた手のひらに
春の光が降りてきた。

誰かと比べる必要のない
無名の時間。
木の下で息を整え、
一杯の湯に心がほどける。

物がなければ何もできぬと思っていた私は、
今では、何も持たないからこそ
なんでも始められると知った。
(COPILOT作)

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