「人生の大問題と正しく付き合うための認知心理学」今井むつみ著を読みました。著者の今井むつみ博士は、慶應義塾大学名誉教授。今井むつみ教育研究所代表。1989年慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。1994年ノースウエスタン大学心理学部Ph.D.取得。慶應義塾大学環境情報学部教授羽を経て現職。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学
。主な著書に「「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?」「学力喪失」など。共著に「言語の本質」などがある。国際認知科学会、日本認知科学会フェロー。
この本は、2025年3月に慶應大学SFCを定年退職するにあたって、学生のみなさんに対して行った「認知心理学」の最後の講義をベースに、認知心理学に初めて触れる読者の方にもお読みいただけるように解説を補足して、書籍化したものです。(はじめにより)
本当に大事なことは、例外なく複雑で、難しくて、正解がない。そうした世界と対峙し、判断していくための手がかりとなるのが、認知心理学のものの見方弥考え方だ。世界的な認知科学者が若者に贈る、知恵とエール!(裏表紙内容紹介より)
この本の中で出てくる例で以前にもみたことがあるのですが、感情的に納得できないものがあるんです。
『ある国に、1000人に1人の割合で、ある感染症にかかっている人がいる。その感染を判定できる検査薬を使うと、感染している場合には98%の確率で陽性反応が、非感染の場合には99%の確率で陰性反応が出るとする。さて、Aさんがこの検査薬を使い、陽性反応が出た場合、この人がほんとうに感染している確率はどのくらいか?』→これはベイズの定理で解く条件付き確率の問題というらしく典型的な問題だそうです。この問題はどの程度正確に確率を計算して、その結果に基づいて合理的な判断することができるできるのか?という例題で、人間は感情的に考えてしまって確率を正しく捉えることができない例として取り上げられています。結論から言えば約8.93%です。COPILOT曰く、確率を個人の判断に使う場合は最小の条件で使用するのは危険で、文脈・倫理・補助情報が不可欠な点もあるそうです。たとえばAさんを濃厚接触者と仮定して感染率10%としてAIに計算し直してもらうと、感染確率は約91.6%になります。さらに検査薬の陽性反応が100%の確率だとしてAIに計算し直してもらうと、感染確率は約9.1%となります。コロナ禍で検査薬を売っていた身からすると感情的に納得のいかないものがあります。約8.93%という数字は意味あるのだろうか?・・・・・・。
・・・・・・・・・これがわかっていても人は間違え、偏った視野をもち誤解するものということかもしれません。博士は、私たちのものの見方にはつねにある種の「偏り」があるということ。そしてその「偏り方」は人によって違うということ。さらにいえば、自分自身に「偏り」があるということに気づけない場合も多いということ。と語っています。私もじっくり考えてみる必要があるようです。