政治哲学講義

2025年11月24日 14:53

「政治哲学講義 悪さ加減をどう選ぶか」松元雅和著を読みました。著者の松元雅和博士は、慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。島根大学、関西大学を経て、2018年より日本大学法学部准教授、2020年同教授、専攻は、政治哲学・政治理論。単著「リベラルな多文化主義」「平和主義とは何かー政治哲学で考える戦争と平和」(2013年、第35回石橋湛山賞)「応用政治哲学ー方法論の探究」「公共の利益とは何かー公と私をつなぐ政治学」共著「ここから始める政治理論」「正義論ーべーシックスからフロンティアまで」「現実と向き合う政治理論」など。(巻末著者紹介より)

正しさではなくマシな悪とは?この本の内容はこんな感じです、「正しさとは何かを探究してきた政治哲学。向き合う現実の世界は進むも退くも地獄、「よりマシな悪」を選んでなんぼの側面を持つ。命の重さに違いはあるのか。汚い手段は許させるのか。大義のために家族や友情を犠牲にできるか。本書はサンデルの正義論やトロッコ問題のような思考実験に加え、小説や戯曲の名場面を道しるべに、「正しさ」ではなく「悪さ」というネガから政治哲学へいざなう。混迷の時代に灯火をともす一書」(表紙裏の内容紹介より)

1940年、イギリスでは、絶対に解読不能とされていたこの暗号を解読するための最高機密作業「ウルトラ」が組織され、密かにドイツのエニグマ暗号の解読に成功していた。ドイツ側の通信を解読した結果、チャーチルは工業都市コベントリーが攻撃対象であることを事前に察知していたが、暗号解読の事実を伏せるためにあえて避難指示を行わなかった。この空襲で都市の中央部はほとんど破壊され、500人以上が死亡し、四万戸以上の家屋が破損した(現在は事実に基づかない神話であると言う見方が有力)。

暗号解読がバレて仕舞えば暗号を変えられてしまい、さらに多くの死傷者が出ることは予想されるが、救える人を救えなかったという事実は決して軽くはない。実際得られた情報は「大規模空襲が近い」程度であり事実を伏せたと言うのは後世の神話としても、実際本当に情報がわかっていたらと仮定したらチャーチルはどのような判断をしたでしょう?とCOPILOTに聞いてみました。

回答→チャーチルは「戦争指導者は時に冷酷な選択をせざるを得ない」と繰り返し語っています。もし正確に知っていたなら、彼は次のように考えた可能性が高いです:私はコベントリーを救えなかった責任を負う。しかしその犠牲によって戦争全体を勝ち抜き、より多くの命を救う責任を負う」つまり彼は「直接的な道徳的責任」と「戦略的な結果責任」の二重の重荷を負ったでしょう。

「よりマシな悪」を選ばなければならない場面では、選択そのものよりも、その選択に伴う責任の範囲と帰属が重要となる?・・・・・・よく考えてみたいと思います。

政治哲学講義と題名がついていますが、この本を読んで松元博士の講義を実際に聞いてみたくなりました。博士のホームページや日本大学法学部(政治経済学科)のホームページをみてみたのですが、社会人向けのオープンカレッジのようなことは行なっていないようなので残念です。

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