「砂の境界」ギーターンジャリ・シュリー著、藤井美佳訳を読みました。著者のギーターンジャリ・シュリーさんは、インドのウッタル・プラデーシュ州生まれ。ヒンディー語作家。大学院在学中に短編小説を発表、卒業後は母語であるヒンディー語を主軸とし、創作活動を続ける。2022年、長編第5作目となるRet Samadhi(原題:砂の三昧)の英語翻訳版Tomb of Sand(砂の墓)が、ヒンディー語圏の作家として初めてブッカー国際賞を受賞。女性の不可視性が、人間・動物・植物・自然を超越した普遍的な形で描かれていると評された。他の長編に、小さな町の家庭を描写した「母」(1993)、モスク破壊をめぐる激動の一年の都市部の生活を女性が語る「私たちの町、その年」(1998)、女性の愛と、階級やジェンダーなど、抑圧から自由への逃避の物語「隠された場所」(2001)、普通の生活が突然奪われるさまを描いた「空白」(2006)があり、複雑なインドの家父長制社会を生きる普通の人々の心の移ろいを親密な視点で物語にしている。演劇集団「不協和音」の創立メンバーとしても活動し、女性と女児に対する性加害と暴力を描く「排水溝の少女」などを執筆。現在、デリー在住。(表紙著者紹介より)
あらすじ
夫を亡くして生きる気力を失っていた八十歳の母が、ある日突然家族の制止を振り切って家を出るところから始まる。彼女が向かうのは、かつて自らの人生を引き裂いたインドとパキスタンの国境地帯であり、その旅は喪失からの再生であると同時に、歴史の傷跡と向き合う巡礼のようなものでもある。母はたびに途中でヒジュラー(第三の性の人々)の友人と交流し、娘とともに道を進むなかで、現実と寓話の境界が溶け合うような不思議な語りの世界へ読者を誘う。カラスが語り、道が記憶を呼び起こし、神話や歴史が現在と重なり合うその旅の中で、母は国境や性別、家族、国家、生と死といったあらゆる境界を超えていく存在へと変貌していく。個人の歩みはやがて、分断の歴史を背負った無数の人々の記憶と響き合い、ひとりの老女の再生の物語が、境界とは何か、越えるとはどういうことかという普遍的な問いへと広がっていく。(COPILOT)
翻訳本を意識して読んでみようと思い選んでみたのですがかなり読みにくいです。時間はかかりますが最後まで読み切って貰うことをお勧めしたいと思います。日本も世界でもそうですが、インドでも今まで存在した境界が揺らぎ始めたのではないでしょうか。時代は移変り今までうまくいっていた構造が崩れ、歪む、境界が曖昧になる・・・。世の中は、ひとりの英雄ではなく、無数の個人の小さな揺らぎの積み重ねで変わるのか・・・。よく考えてみたいと思います。