知ってるつもり

2022年01月14日 08:53

「知ってるつもり 無知の科学」という本を読みました。これは2人の認知科学者、スティーブン・スローマン(ブラウン大学教授)とフィリップ・ファーンバック(コロラド大学教授)による共著となっています。行動経済学から人工知能まで各分野の研究成果を総動員して、私たちが頭の内と外にある知識の間に明確な線引きができないため、知識の錯覚を起こして「知ってるつもり」に陥ってしまうという本質に迫っています。「知ってるつもり 無知の科学」との邦題は少しやりすぎ感があります。原題「THE KNOWLEDGE ILLUSION  Why We  Never Think Alone」の方が内容を良く表しているのではないでしょうか。インターネット、テクノロジー、生物学、物理学、歴史学、政治や教育などの幅広い実例を挙げて、いかに人類が自らの理解度を過大評価しながらも、高度な文明社会を築くことができたのか?理解の限界を知り、知識はコミュニティーの中で共有され、知識の公共性を受け入れることで、コミュニティー全体の幸福度をますような形で「知っていること」は生かされる。この本、読み応えありました面白いです。なるほどなあと思いました。「知ってるつもり」に陥ることは仕方のないことだが、その処方箋について著者たちは結びにこう書いています。無知は歓迎すべきことではないが、必ずしも悲嘆すべきものでもない。無知は避けられない。それは自然な状態だ。東洋思想には、自らの無知を認めよ、と説くものがある。自らの知識がわずかであることを受け入れ、他者の知識に敬意を持て、と。さらに踏み込み、他者の知識に感謝するように促す教えもある。これは認知科学にも重要な示唆を持つ。個人が学習し、理解できる量には限りがある。それを超える何かを成し遂げるには、コミュニティーが必要だ。根本的な営み、すなわちモノを考えることにおいて、私たちは一蓮托生なのだ。

世の中には本当に知らないことがたくさんあるのだと感じています。私がこの本から得られた知識に敬意を持ち、執筆された著者のお二人に感謝するところから始めたいと思います。ちなみのこの本は図書館で借りて読むことができたのですが、それについても感謝したいと思います。

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