塞王の盾

2022年02月10日 11:40

「塞王の盾」今村翔吾著を読みました。作者の今村翔吾さんは変った経歴を持っているようで、ダンスインストラクター、作曲家、埋蔵文化財調査員を経て、専業作家になったそうです。幼少期からテレビの時代劇が好きで、小学校5年生の時、池波正太郎の「真田太平記」に出会ってから、司馬遼太郎、藤沢周平などの作品を読み時代小説の面白さに目覚めて、小説家を目指すようになったとのこと。今回の作品もそうですが主に時代小説を書かれている、時代小説作家です。

『最強の盾』対『至高の矛』とは・・幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介。彼は『絶対に破られない石垣・・・最強の盾』を造れば、世から戦いを無くせると考えていた。一方、戦いで父を喪った鉄砲職人の彦九郎は『どんな城でも落とす砲・・・至高の矛』で人を殺し、その恐怖を天下に知らしめれば、戦いをするものはいなくなると考えていた。大軍に囲まれた絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。盾と矛・・、矛盾した思いは戦火の果てにどうなるのか?・・・・・・・・・。この本面白いです。ぜひ読んでもらいたいと思います。

日本人のDNAには、一つの道を極めた職人に対する憧れというか尊敬というか、何か言葉にできない感覚的なものがある様な気がします(海外に住んだことがないのでわかりませんが、世界共通なのかもしれません)。コモディティ化は物の値段を下げることだったり、ユビキタス社会はいつでもどこでもネットワークにつながることができる便利さだったり、大切だとは思うのですが、その世界に生きている職人にしかわからない世界、ライバル同士が切磋琢磨することで生まれる究極の技の様な世界は、外にいる人間からはなかなか理解出来ない世界であるゆえに、特別な感情を持つのかもしれません。

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、「どこか腑に落ちた気がします。今は必然と思えるのです」というセリフが印象に残っています。

記事一覧を見る

powered by crayon(クレヨン)