浮雲

2021年06月05日 08:43

「浮雲」は1955年の成瀬巳喜男監督作の映画です。かなり前に1回観ただけだったので、細かいところはだいぶ忘れていました。小津安二郎監督は俺にできないシャシンは溝口の「祇園の姉妹」と成瀬の「浮雲」だけだと語っていたそうです。原作の林芙美子さんは他にも「放浪記」(舞台化、映画化、テレビドラマ化されている)や「めし」(成瀬巳喜男監督により映画化されている)などの小説も書かれています。貧しい現実を描写しながらも、夢や明るさを失わない独特な作風で人気を得ています。ちなみに映画の最後に登場する“花の命は短くて苦しきこと多かりき”は原作の林芙美子さんが色紙などに好んで書いた短詩だそうです。脚本は水木洋子さんで「ひめゆりの塔」(今井正監督)や「山の音」(成瀬巳喜男監督)「龍馬がゆく」(大河ドラマ)なども手がけています。この映画は2009年にキネマ旬報が発表した歴代日本映画オールタイムベストランキングで1位「東京物語」2位「七人の侍」に次ぐ3位になっておりキネ旬では“黒澤、小津、溝口の三大巨匠と比べて過小評価されているとも言われる成瀬巳喜男監督の代表作。日本史上最も優れた恋愛映画と評される。妻子ある男性と、女の愛情を描いた大人のラブストーリー。激動の終戦直後が舞台。”と解説されています。内容については映画の方をぜひ観てもらいたいと思います。当初主演を依頼されていた高峰秀子さんが「こんな大恋愛映画は自分にはできない」と考えていたエピソードや1980年代に吉永小百合さんと松田優作さんでリメイク計画があったが吉永小百合さんが「私にはできない」と断ったエピソードなど主演女優としては大変な役なのかも知れませんが、高峰秀子さんの演技は見どころの一つだと思います。かなりドロドロとした重い内容の話なのですが、原作の林芙美子さんの作風や脚本の水木洋子さんのテンポの良さが関係しているのでしょうか・・・映画全体で見れば、重苦しいウエットな感じの印象ではなく、不思議と淡々とドライな印象を受ける作品に感じます。
もともと成瀬巳喜男監督作を観るようになったきっかけは香川京子さんの主演作を見てからなのですが、香川京子さんの出演作も見たいので「近松物語」(溝口監督)「ひめゆりの塔」(今井監督)なども観たいなあと思っています。

記事一覧を見る

powered by crayon(クレヨン)