悪意の科学

2023年06月08日 16:29

「悪意の科学」サイモン・マッカーシー=ジョーンズ著を読みました。原題は「SPITE and the Upside of Your Dark Side」となっていますので、直訳っぽくするなら「悪意 心の闇の利点」といった感じでしょうか。

著者のサイモン・マッカーシー=ジョーンズ博士はダブリン大学トリニティ・カレッジの臨床心理学と神経心理学の准教授で、さまざまな心理現象について研究を進めている。「ニュー・サイエンティスト」「ニューズウィーク」「ハフポスト」「デイリー・メール」「インディペンデント」などの多くのメディアに機構しています。

なかなかこの本はどんな本?と言われても説明しづらいので、本の内容の一部を抜粋したいと思います。“はじめに“のところでこんな事を著者は書いています。『アメリカの哲学者ジョン・ロールズは、道徳上の徳は人々が「仲間としてお互いに関して欲することが合理的であるような」性格特性の1つだが、悪意は人間が他者に欲しない特性であり、「すべての人に危害を及ぼす」悪徳であると言っている。だが、これは本当だろうか?悪意をより詳しく検証していくと、異なる側面が見えてくる。というのも、どうやら悪意には善を促す力があるようなのだ。悪意は私たちが自分を高め、何かを創造する助けとなることもある。しかも、必ずしも協力の妨げになるとは限らない。実際のところ、悪意は逆説的に協力を促すこともある。また、必然的に不公平を生み出すわけではなく、不公平をなくすための最強のツールの1つとなることもある。不公平や正しがたい不平等がある限り、人間には悪意が必要なのだ。』(はじめにより抜粋)この本はちょっと不思議な感じのする本で、悪意についての今までのイメージを覆す、別の側面に焦点を当てています。なぜ悪意は進化で失われなかったのだろう?悪意とはそもそもなんだろう?こうした疑問に著者は具体例(最後通牒ゲーム・独裁者ゲーム等)を挙げて科学的に分析されていますので、その辺は、是非この本を読んでみてください。

支配的悪意、反支配的悪意・・・人間は天使でなければ悪魔でもない。自分自身を理解するには1つの面だけではなく、自分の全ての面を理解する必要があると著者は解きます。悪意は魂についた汚れなどではなく、魂の一部なのだ・・・・・考えさせられました。

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